CRC目線で考えてみた!治験責任医師が逮捕されちゃった事件から学べること

この記事を書いた人】ナナコ 1978年生まれ。元看護師で現在はCRC歴7年目の現役CRC。看護師の仕事が肌に合わず、2010年に思い切ってCRCへ転職!CRCの仕事が楽しくて人生が変わった一人。この仕事を広めるために活動中!⇨詳しいプロフィールはこちら

みなさんこんにちは、管理人のナナコです。

この記事では、2017年5月に報道された、愛知県の公立陶生病院の治験責任医師が「第三者供賄罪(だいさんしゃ きょうわいざい)」で逮捕・起訴された事件について、CRC(治験コーディネーター)目線で考えてみたことを、みなさんにシェアしたいと思います。

第三者供賄罪(だいさんしゃ きょうわいざい)とは
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処される(刑法197条の2)。
wikipediaより

ネットやニュースでみた人もいるかと思いますが、先日、愛知県瀬戸市にある公立陶生病院で治験責任医師をしていた、呼吸器科・アレルギー疾患内科部長の医師(以下、A医師とします)が贈収賄容疑(ぞうしゅうわいようぎ)で逮捕・起訴されました。

この先生は、呼吸器科の治験では、被験者さんをガンガン組み入れてくれる“治験が得意な先生”ということで有名だったそうです。

逮捕された容疑(原因)は「ASOCIA(アソシア)という社名のSMOに、他のSMOより治験を優先的に受託できるよう便宜を図り、その見返りとして、息子の嫁の口座に計約94万円の賄賂を振り込ませた」というもの。

※『SMO』とは治験施設支援機関(Site Management Organizations)の略で、簡単に言えば、CRCが所属する会社の業界グループのこと。

ニュースによるとA医師は、自分が関わる治験は全部、補助業務の発注先を他社SMOからアソシアっていう会社に一斉変更しちゃったんですって!

また、この「息子の嫁」というのは、勤務実態はないものの形式上アソシアの社員になっていて、賄賂は『給与』として振り込ませていたそうです。

『息子の嫁=アソシアのCRC(治験コーディネーター)』ということにでもなっていたんですかね・・・?

当然ながら、SMOアソシアの実質経営者も、贈賄罪(ぞうわいざい)で逮捕・起訴されています。

(※ちなみに、2017/5/25現在、二人とも容疑を否認しているらしいです)

こんな事件が起きてしまった背景を知ろう!

それでは、なぜこのような贈収賄事件(ぞうしゅうわいじけん)が起きてしまうのでしょうか?

その原因をCRC目線で考えると、答えはズバリ!

「SMO同士の競争」「陶生病院で、治験に関してA医師がかなり力を握っていた」ことですね(-ω-;)

贈収賄事件の原因⑴ SMO同士の競争

一つの病院に複数のSMOが入っていると、医師が受けた治験の補助業務をどのSMOが担当するか?っていう競争があって、現場のCRCはけっこう精神的にキツかったりします、、、

クリニックなどの小さな施設では、医師や患者さんの人数的にも、CRCが仕事をするスペース的にもそれほど大きくないので、SMOは1社しか入っていないことが多いです。

しかし、大きな病院は違います。

今回の事件があった公立陶生病院は、職員数1,316名、病床数701床のけっこう大きめな病院。

こういう「地域の拠点」となるような大きな病院では治験も盛んにやっているので、おそらくSMOは2〜3社入っていると思われます。

医師が治験を受託した時、治験補助業務をどのSMOに発注するか?を決定するのは、病院独自のルールだったり、製薬会社の意向だったり、医師の意向だったりと、色んなパターンがあります。

ちなみに、今、私が派遣されている病院では『早い者勝ちルール』で決まります。

SMOから病院に「製薬会社からこんな治験の情報があるんですが、○○科の先生でやりませんか?」と提案したのが早かったSMOが、その治験の実施が決まった時に補助業務を受託できるってルールです。



それぞれのSMOが『診療科』ごとに住み分けできていると、CRCとしては、仕事的にも気持ち的にも楽なんですけどね。

例えばSMO①は肝臓内科と整形外科を担当、SMO②は呼吸器内科と循環器科、SMO③は消化器内科を担当する・・・みたいに。

でも実際は、そんなにうまく住み分けができず、同じ科の中に複数のSMOが入っているので、先生たちは「え〜っと・・・この治験はどのSMOだっけ?」って混乱されることもしばしば(^-^;)

補助業務を受託すると、1試験につきだいたい数百万円から多い時では一千万円以上が、SMOに支払われます。

たった1試験でこれだけの収益になるわけですから、当然ながらどのSMOも「他社じゃなくてうちの会社を選んで〜!!」って気持ちが強いんです。

だからA医師の息子の嫁を“雇った”形にして、給与と見せかけて賄賂を送ったアソシアってSMOは、法律に違反してでも、一つでも多く仕事を受けようとしてしまったんですね、、、

贈収賄事件の原因⑵ 陶生病院で、治験に関してA医師がかなり力を握っていた

A医師は、たくさんの被験者を治験に集めることが得意で、呼吸器科分野の治験関係者の中では、ちょっと有名な存在だったそうです。

被験者をできるだけ早く、そして多くエントリーしてくれる医師は、製薬会社からみたら本当にありがたいもの。

また、被験者を入れた数だけ病院にも収益があるので、治験をガンガンやってくれる医師は、病院側にとってもありがたい存在なんですね。(もちろん、不正はいけませんが)

A医師が治験を通して病院にたくさんの収益をもたらしてくれるので、陶生病院の治験に関する意思決定は、A医師の意見がそのまま通ってしまう状態だったもよう、、、

だから、他社SMOが受託していた試験を、途中からアソシアに一斉変更するなんてことができちゃうんですね!

普通、信じられないことですよ。

私立病院ならまだしも、陶生病院は公立病院なので、これは絶対ヤバイです。

・・・で結果、第三者供賄罪(だいさんしゃ きょうわいざい)で逮捕されちゃったわけですね┐(´д`)┌

この事件を『アソシアのCRC』目線で見てみよう

この事件が発覚して、アソシアから派遣されていたCRCが、その後どうなったか分かりません。

でもここでちょっと、アソシアのCRC目線で、この事件から受ける影響を見てみましょう。

ある日突然、責任医師が逮捕されちゃったら・・・?

まず最初に、治験がらみのことで逮捕されているので、当然、アソシアのCRCも警察から取り調べを受けるでしょうね、、、。

他社SMOとの“正当な競争”から道を外れ、不当な便宜を図ってもらって自分たちも“いい思い”をしてきたんですから、(普通の思考の持ち主だったら)後悔の念に苛まれ、かなり精神的に参ってしまうだろうと思います。

そして次の問題は、今動いている治験をこのまま続けてもいいのか?ってことです。

続けてもいいのかどうかの判断は、おそらく治験依頼者(製薬会社)や病院が下すことになりますが、仮に「続けてもOK」って決まっても、責任医師はもういませんから『責任医師交代の手続き』を取らなくてはいけません。

分担医師か、誰かそれ以外の医師に「責任医師」になってもらわなくてはいけないんです。

書類上の手続きが完了するまでは、最低でも1〜2週間、長ければ数ヶ月かかりますから、その間は治験がストップしてしまうことになるでしょう。

もし仮に、「続けられない」という判断になった場合、CRCは今動いている治験を急いで中止するよう、関係者の調整をしなければなりません。

被験者さんに処方した治験薬をすぐに中止していただくよう連絡し、被験者さんの健康状態を知るために(中止時検査を受けるため)病院に来院してもらうよう依頼するのです。

また、このような事件がきっかけで治験が中止になってしまった場合、治験依頼者(製薬会社)から、損害賠償を求められる可能性があります。
製薬会社は治験をするのに膨大な費用をかけてますからね。

今回の場合は当然、CRC個人に請求されることはありませんが、医師とSMOの両方に請求されちゃうと思います。

アソシアのように小さなSMOでは、損害賠償により倒産してしまう可能性だってありますよね、、、(-ω-;)

そして次に、被験者さんへの対応です。

現在進行中の治験に参加している被験者さんに説明しなければいけないのはもちろんのこと、過去に終了した治験に参加してくださった被験者さんにも、事情の説明と謝罪が必要になるかもしれません。

(実際に賄賂が送られていたのは、2015年頃の話のようですし)

最後に、この事件の問題は公立陶生病院だけにとどまらず、他の病院にまで拡散してしまう可能性もあります

他の病院の治験も含めて、アソシアが請け負っている全ての治験について、不正はなかったか?得られた治験のデータは信頼性があるのか?など、調査される可能性もあります。

そこで仮に「アソシアが受託していた“他の病院”の治験データも信頼できない=データを採用できない」となると、かなり大変なことになってしまいますね、、、

実際に今回の事件が起きた後、A医師がやってた治験がどうなったのかは分かりませんが、そこに派遣されているCRCは、事件後の対応に毎日追われているだろうと思います(^-^;)

この事件を『他社SMOのCRC』目線で見てみよう

それでは次にこの試験を、受託していた治験をアソシアに乗っ取られてしまった他社SMOのCRC目線で見てみましょう!

いままで真面目にやってきた他社SMOは、この事件が発覚して「当然だ!不正は許されないぞ。最後に必ず正義は勝つd( ̄∇ ̄*)!」と喜んでいることと思います。

だって、いままで自分たちが請け負ってやってきた治験を、ある日突然、アソシアに横取りされちゃうなんて、絶対許せるものじゃありませんから!

CRCが一番大変なのは「治験を立ち上げる(開始する)とき」です。

もっとも時間と労力がかかる「治験の立ち上げ」をやっと終え、被験者さんとも心を打ち解けて仲良くなった・・・と思ったら、アソシアのCRCに横取りされちゃうんですよ(+д+;lll )

しかも責任医師に賄賂を送っての横取りo(o・`з・´o)ノ!!!

私自身を含め、全国のCRCはおそらくこっちの「他社SMO」目線で考えるので、多くのCRCが「(容疑が本当なら)逮捕されてよかった!」と喜んでいることと思います。

国公立病院は、SMO選びは『公平』でなければならない

この事件から言えることをまとめると、「国公立病院は『公平』にSMOを選ばばくてはいけない」ということです。

(※クリニックや私立病院では、院長の独断で決めてもOK)

正直いうと、複数のSMOが入っている病院に派遣されているCRCは「いつでも他社のCRCと比べられている」「他社に負けないようなサービスを提供しなきゃいけない」という意識や行動が求められるので、決して楽ではありません。

疲れてくると、競争相手のCRCがいなくなって「独占」できればどんなに楽チンだろう・・・。゚(゚´Д`゚)゚。と思ってしまうこともあります。

でも「他社よりいいサービスを提供するから選ばれる」って、資本主義のまっとうな競争原理ですし、これこそが『公平』なんですよね。

いいサービスを提供するSMOやCRCが、顧客(病院や製薬会社)から選ばれ仕事を得て、結果として大きな利益を得られる。

いたって普通のことです。(少なくとも日本国内では)

だから自分も、(賄賂なんか渡さなくても)病院や治験依頼者から「このSMOさんにお願いしたい。このCRCさんにやってもらいたい。」と思ってもらえるようなCRCになりたい。

お客様から選ばれる仕事ぶり、人柄を持ったCRCになれるよう努力しよう!と、改めて心に誓ったのでした。

みなさんもCRCになったら、そんなCRCを目指してくださいね!

CRCへ転職するか、迷ってる?

CRCの仕事に興味を持っているものの、まだ決めかねている・・・という人も多いのではないでしょうか。

あなたが一番気になっているポイントはどこでしょうか?

  • お給料
  • 将来性
  • 自分がやっていけるかどうか?
  • そもそも就職できるのか?

などなど、いろいろありそうですね。

CRCになるための『三大医療資格』は看護師・薬剤師・臨床検査技師です。

あなたがすでにこれらの資格をもっていれば、CRCへの転職はそんなに難しいものではありません^^♪
こちらの記事に、CRCになる方法を詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください。

>>SMOのCRCになる方法をわかりやすく解説!>>

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