CRCの事件簿〜エッ?!被験者さんが入院してる?!編〜

被験者さんが入院していた

この記事を書いた人】ナナコ 1978年生まれ。元看護師で現在はCRC歴7年目の現役CRC。看護師の仕事が肌に合わず、2010年に思い切ってCRCへ転職!CRCの仕事が楽しくて人生が変わった一人。この仕事を広めるために活動中!⇨詳しいプロフィールはこちら

みなさんこんにちは。今日は、私が先日経験した「超ヒヤッ!とした事件」をご紹介します。

その事件とは、、、CRC(治験コーディネーター)が知らぬ間に、治験参加中の被験者さんが入院していた!しかも、今日で入院3日目!!というものです。

えっ・・・?
「被験者さんが入院していることが“事件”だなんて、大げさじゃん!」って思いました??

それが、“大げさ”なんかじゃないんですよ〜!
CRCにとって、被験者さんが自分の病院に入院していることに気づかないのは『命取り』です。

ここでポイントになるのが「自分の病院に」というところ。
もし「別の病院」だったらそこまで焦ったりしないんですけどね。

さて、それはいったい、どういうことなのか・・・?
早速解説していきましょう!

最重要な治験用語『SAE』とは?

今日ここで、ぜひともみなさんに覚えていただきたい治験用語があります。
私たちCRCやモニターなど、治験に関わる人の間ではたくさんの治験用語が使われますが、その中でも「超」が3つ付くほどの超超超大事な用語。

それは、SAE

「サエ」って読むんじゃないんですよ。
SAE』と書いてそのまま「エス・エー・イー」と読みます。

SAEとは『Serious Adverse Event =重篤な有害事象』の略です。

あっ、そうそう。
SAEを覚えていただく前に、まずは「AE」を知らないといけないですね。

AEと書いて「アエ」じゃないですよ。笑
「エー・イー」と読みます。

AE(エー・イー)とは、Adverse Eventの略で被験者さんに起こったあらゆる好ましくない事象すべてを指します。

好ましくない事象とは例えば、

  • 風邪
  • 膀胱炎
  • 急性胆管炎

などの“身体的な病気”に加え、

  • うつ病
  • 気分不安定症

などの“精神的な病気”も含まれますし、さらに

  • 肝機能が基準値の2倍になった
  • クレアチニンが基準値を超えた

など、“臨床検査の異常値”も含まれます。

さらにさらに、

  • 転落(庭の木を剪定していたらハシゴから落ちた)
  • 交通事故(歩いていたら車にひかれた)

などの偶発的な事故も好ましくない事象「AE」に含まれるんです。

AEにするのは、治験薬との因果関係の有無は関係ありません。
全く因果関係がない「交通事故(歩いていたら車にひかれた)」だって、立派なAEに含まれます。
(※ただし、この場合の事象名は「交通事故」として報告するのではなく、「◯◯打撲」「◯◯骨折」などの診断名を使いますけどね)

そして、これらのAEの中でも、特に症状が重たい(重篤)ものに『Serious=重篤な』をつけて『SAE(Serious Adverse Event)』と呼びます。

SAEとは、次のような状態に至る事象を指します。

<SAEになる有害事象>

  1. 死亡に至るもの
  2. 生命を脅かすもの
  3. 治療のための入院もしくは入院期間の延長が必要なもの
  4. 永続的もしくは重大な障害・機能不全に陥るもの
  5. 先天異常を来すもの
  6. その他の重大な医学的事象

(これは、基本的にすべての治験で共通している基準です。)

治験中にSAEが発生した場合、治験担当医師やCRCは、それを知り得てから24時間以内に治験依頼者へ報告するのがルールです。

この『24時間』にはお正月休みもゴールデンウィークも関係ありません。
本当に『24時間』なんです。

これが、厚生労働省が出しているSAEを報告するための統一書式(見本)です。

統一書式 書式12

CRCが知らぬ間に、被験者さんが入院していた!!「知り得た」っていつ?

ここまで読んでくださった方はもう、私が“事件だ”と騒いでいる理由がわかりますよね。

そう。「被験者さんが入院していた=SAE」なので、私たちCRCは知り得てから24時間以内に治験依頼者(製薬会社)に報告しないといけないんです。

で。ここからが問題。
「24時間以内」というのが、どのタイミングからカウントが開始されるのか?ということです。

その答えは「知り得た時から」。

知り得るとは
努力して知ることができること、あるいは情報を手に入れる可能性があることなどを意味する表現。
引用:weblio辞書

これは、現役CRCの中でも誤解している人が少なくないのですが、「知り得た時から」というのは、実際に「知った」ことを「得た」とき(=知ったとき)じゃなくて、「知り得た=努力すれば得ることができたであろう」ときなんです。

つまり“自院(=自分の病院)”に入院したときは「入院した時から」、“他院(=別の病院)”だったら、被験者さんから聴取したり、他院からの情報が入ったりした瞬間から・・・ということになります。

<補足>
この考え方は、時代とともに変化していて、数年前までは自院に入院していても、他科に入院していて治験担当医師やCRCが知らなければ「まだ知り得ていない」ということで許されていました。しかし最近は少しずつ厳しくなり、たとえ他科であっても、自院に入院したのであれば「入院したとき」が知り得た時であるという考え方になっています。

今回の“事件”の場合は“自院に入院”して、しかもそれは3日前、、、

もう、超ヤバイ事態です。

この事件を見つけた瞬間、私は頭が「・・・・・????」となり、今が20◯◯年なんだか、自分が見ているものが何なんだか、、、別の人のカルテを見ているだけなんじゃないか?とか、さっぱり意味がわからなくなってしまいました、、、苦笑。

入院したらすぐにCRCに連絡をもらえるようにする仕組み

SAEを知り得てから24時間以内に報告することがCRCの重要な役割ですから、被験者さんが自院に入院したらすぐCRCに連絡をもらえるよう手配しておくことは、とっても大切なことです。

連絡をくれる相手は、

  • 治験を担当している医師
  • 治験に関係していない病院スタッフ(医師・看護師・薬剤師または守衛さんなど)
  • 被験者本人、または家族

など、誰でもいいんです。
とにかく、患者さんが入院する⇨治験に参加している人だと気づく⇨CRCに連絡するという流れができればOK。

ここで、私自身が実際にやっている方法をご紹介します。
CRCの中ではごくごく一般的な方法なので、みなさんがCRCになった後も経験すると思います。

1)電子カルテの掲示板に「治験参加中。入院されたら至急CRCに連絡してください」と表記する。

それぞれの病院が使っている電子カルテシステムにもよりますが、多くの病院のカルテには掲示板機能、もしくは付箋機能がついています。
患者さんのカルテを開いた時に、最初に表示されるページです。

そこに「治験参加中。入院されたら至急連絡をください。連絡先CRC◯◯(090-××××-××××)」と目立つように書いておきます。

2)薬剤師さんをしっかり教育する。

病院スタッフの中でも、薬剤部は治験との関わりが深い部署です。

院内の治験管理室は、たいてい薬剤部スタッフ(薬剤部長など)の監督のもと存在していますし、治験薬の保管は払い出しで日常的にCRCが出入りする部署でもあります。

つまり、治験に関する意識が高いんですね。
だから、治験の患者さんが入院したら連絡してほしいとお願いするのも、薬剤部は特に有効です。

しかも、入院した患者さんには、ほぼ100%なんらかの薬剤(注射や内服)が処方されますよね。
入院したのに、薬が一切使われない・・・なんてことはほどんどありません。
だから、昼間でも夜間でも、被験者さんが入院したら必ず薬剤部にその情報(被験者さんの名前)が入ります。
そのため個人的には、病院スタッフの中でも看護師さんや事務員ではなく、薬剤師さんへの教育をしっかりしておくと、連絡が漏れることは少なくなるように思います。

3)被験者さんや、ご家族への指導

これは“最後の砦”ともいえる方法ですが、入院したら、被験者さん自身からCRCに連絡してもらうようにしっかり教育しておくのです。

この方法ですと、自分の病院に入院したときだけでなく、別の病院に入院したときもタイムリーに連絡がもらえます。

この流れを構築するためには、とにかく繰り返しの教育が大事。
被験者さんに一回や二回お願いしただけでは、すぐに忘れられてしまいます。

会うたび会うたびに、「何かあったらすぐに電話してくださいね。ここの病院に入院したときも、私に伝わらないことがあるんです。だから、きっとわかっているだろうと思わず、かならず◯◯さんから直接私にお電話くださいね」と、しつこいくらいにお願いするのがポイントです。

まとめ

今日は、CRCが知らない間に被験者さんが入院していたのに(=SAE発生)、3日間も気づかなかった事件をご紹介しました。

えっ・・・?今回の事件で、結局どうなったかって・・・?

被験者さんは、一週間程度で無事に退院されました^^

そして私の方はといえば、、、

『知り得てから24時間以内に報告できなかった』として、原因と対策を考えて会社に報告し、医師にも報告し、逸脱報告書を書き、、、と、しばらく大変な日々が続きました・・・(⌒-⌒;)

みなさんもCRCになったら、被験者さんが入院したときにすぐにCRCに連絡が入るよう、しっかりと体制を築くようにしましょうね!

CRCへ転職するか、迷ってる?

CRCの仕事に興味を持っているものの、まだ決めかねている・・・という人も多いのではないでしょうか。

あなたが一番気になっているポイントはどこでしょうか?

  • お給料
  • 将来性
  • 自分がやっていけるかどうか?
  • そもそも就職できるのか?

などなど、いろいろありそうですね。

CRCになるための『三大医療資格』は看護師・薬剤師・臨床検査技師です。

あなたがすでにこれらの資格をもっていれば、CRCへの転職はそんなに難しいものではありません^^♪
こちらの記事に、CRCになる方法を詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください。

>>SMOのCRCになる方法をわかりやすく解説!>>

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